日本心臓血管内視鏡学会 学術集会・イベント

学会賞(褒賞内田賞・ベストイメージ賞)

内田賞について・応募要項について

褒賞内田賞の主旨や条件等・応募要項につきましては、こちらをご参照ください。⇒詳細ページへ

第31回学術集会 内田賞

「Impact of Diabetic Retinopathy on Vulnerability of Atherosclerotic Coronary Plaque and Incidence of Acute Coronary Syndrome. Am J Cardiol 2016;118: 944-949」

栗原 理日本医科大学千葉北総病院

このたびは褒賞内田賞の名誉を賜り、内田康美先生をはじめ、選考委員会の先生方に心より厚く御礼申し上げます。

糖尿病は腎症, 網膜症, 神経障害などの細小血管障害を引き起こします。一方で冠動脈疾患、 脳血管障害などの大血管障害の原因となることが知られていますが、細小血管と大血管障害の直接的な関連を示した報告は限られています。

血管内視鏡は冠動脈内を直視に近い形で観察することで生体での病理診断を可能にします。 血管内視鏡で同定される黄色プラークの多くは、病理学的に豊富な脂質成分とそれを覆う薄い線維性被膜で構成され不安定プラークと考えられています。(図1)

図1

血管内視鏡を用いた本研究から導きだされた新しい知見は、
1.細小血管障害である網膜症と大血管障害である冠動脈の動脈硬化の重症度, 不安定プラークの形成が関連する(図2)
2.網膜症の存在は最終的に急性冠症候群というイベントの発症にも関係する(図3)
という点です。

本研究の結果は心血管イベントのリスクの高い糖尿病患者を層別化し、その管理における有益な情報となることが示唆されました。

図2

図3

最後になりましたが、この論文作成に多大なご尽力を賜りました三越厚生事業団 水野 杏一先生、日本医科大学千葉北総病院 高野雅充先生をはじめ、当院の歴代の先生方が培われた血管内視鏡の土台によりできた論文であり、深く感謝申し上げます。今後とも御指導御鞭撻のほど宜しくお願い申し上げます。

第31回学術集会 ベストイメージ賞

「血流維持型血管内視鏡による大動脈弁の評価とその有用性について」

小嶋 啓介(日本大学医学部附属板橋病院)

この度は、第31回日本心臓血管内視鏡学会ベストイメージ賞に御選考頂き大変光栄に存じます。木島会長をはじめ、我々の演題をご評価いただきました先生方にお礼申し上げます。

今回、血流維持型血管内視鏡(内視鏡)を用いて観察し得た大動脈弁を提示させていただきました。内視鏡を用いて大動脈弁を観察すると、黄色度や弁表面の性状、弁の肥厚の有無、可動性などを評価することができました。大動脈弁狭窄症症例では黄色度が高く、表面は粗造で厚みを帯び、弁の解放制限が見られましたが、冠動脈症例では弁は白色かつ表面平滑で異常所見を認めず、大きく異なる所見が得られました。

これらの情報のうち特に弁の黄色度は、従来大動脈弁の評価に用いられてきたCTや心エコーでは評価できなかった新しい所見です。今後症例を重ねていき、内視鏡所見をもとに大動脈弁狭窄症患者の周術期リスク評価や大動脈弁狭窄症進展の予測が可能になればと期待しております。

最後に、今回の受賞に際しご指導・ご助力いただいた日大板橋病院の先生方やスタッフの方々に深く感謝申し上げます。