日本心臓血管内視鏡学会 学会概要

日本心臓血管内視鏡学会 理事長挨拶

国立病院機構大阪医療センター 循環器内科科長
上田 恭敬

上田 恭敬

1987年に発足したレーザー血管内視鏡研究会が、平成9年の第11回大会より日本心臓血管内視鏡学会となって、現在に至っています。本学会は、初代理事長の内田康美先生、2代目理事長の水野杏一先生のもとで、専門医・認定医制度、教育施設、学会誌「心臓血管内視鏡(Angioscopy)」等が整備されて、本格的に学会としての活動を開始し、発展を遂げてきました。これまでに31回の学術集会が開催され、多くの研究成果の発表と活発な議論が行われてきました。本年は、これまで困難とされてきた大動脈を観察した結果も報告され、心臓血管内視鏡の新たなフロンティアはさらに広がりを見せています。その中、本年の学術集会時に開催された理事会においてご指名・ご承認いただき、3代目の理事長に就任させていただくことになりました。

心臓血管内視鏡は、生体内の心血管の内面を肉眼的に直接観察できる唯一の方法であり、肉眼的病理診断が可能です。また、これは簡単には定量化できない非常に多くの情報を含んだ4次元のフルカラー動画画像診断法で、解析法の進歩によって抽出できる情報量はまだまだ拡大すると考えられます。このように貴重な画像診断法であるにもかかわらず、現在海外で臨床使用できる国はなく、日本においてのみ臨床使用可能で、保険診療においても認められています。その結果、これまでに多くの研究成果が、学会発表や論文の形で日本から発表されてきました。単にどのように見えるかといった検討だけでなく、内視鏡所見を臨床にフィードバックできる成果も数多く報告され、海外の循環器学の教科書にも引用されており、それらの研究成果は「心臓血管内視鏡学」といった学問体系にまとめ得るレベルにまで達してきたと感じています。

しかし、心臓血管内視鏡がさらに発展するためには、いくつかの課題が残されています。一つは、日本独自の技術であるために、その国際的な認知度は低く、有用性についても過小評価されており、より一層の海外への情報発信が必要です。また、内視鏡所見に基づいて、治療法を直接左右するような、信頼性の高いエビデンスを作ることも非常に重要です。さらに、この技術が普及するためには、より使いやすいデバイスや解析装置の開発も不可欠です。

今後、本学会としては、学会誌を完全英文誌化することを決めましたので、これによって海外への情報発信力を高め、心臓血管内視鏡及びその研究成果についての国際的認知度を高める努力をしていきます。また、内保連へ加盟して健保対策を行うことが決まりましたので、これによって心臓血管内視鏡の工業技術的発展に不可欠な、経済的背景の整備にも努力していきます。さらに、毎年の学術集会だけでなく、様々な形で心臓血管内視鏡についての議論を行う場を作っていきたいと考えており、これらの活動を通して、本領域の研究・診療活動に関わる全ての医師・コメディカルの助けになることを目指していきます。

最後に、この貴重な画像診断法が、医学の進歩、医療の質の向上に貢献し、多くの人の命を救えるようになることを期待して、私の挨拶とさせていただきます。